最近読書をする余裕ができてきたので、買ったまま積んでいた本(紙、電子書籍共々)や控えていた本を購入してようやくボチボチと読み始めた。
電子書籍はAmazon Kindleで主として購入し、小説等の文字主体の書籍はAmazon Kindle Paperwhiteで、コミックや雑誌やムック等はASUS ZenPad 3 8.0 (Z581KL)で読んでいた。どうせならAmazon Kindle Paperwhiteで一括したいところが、漫画や雑誌系となると、縦画面だと1ページしか閲覧できなくて見開きページが読みにくいし、横画面で閲覧しようとなると6インチでは細かくなってとても読みづらい。ASUS ZenPad 3 8.0 (Z581KL)は7.9インチで高精細なので横画面でも細かいところまでかなり綺麗に表示できるが、もうちょっと大きな画面で見たいと思えてきた(それなら手持ちのパソコンで見れば良いだけの話ではある)が、Amazon Kindle Paperwhiteの上位版Amazon Kindle Oasisでも7.8インチサイズしかない。
それじゃあ以前インターネット記事でチラッと見掛けたAndroid搭載汎用電子ペーパー(E Ink)タブレットなら、Amazon Kindleだけでなく他の電子書籍サービスも使えそうだしどうだろうかと探すと、Onyx(文石科技) BOOXシリーズかboyue(博阅科技) Likebookシリーズのほぼ2択となった。
BOOXとLikebookのスペックはこれまではどちらも同等クラスであったが、近頃BOOXの方があのQualcomm SnapdragonやAndroid 9.0を搭載したモデルを投入し始めており若干先行しているようだ。しかし各々のレビュー記事を斜め読みしてみると、LikebookもまたBOOXに無いモノ(例えばLikebookにはSDカードスロットを搭載)を持っていたり、動作安定性とかなかなか拮抗しており一長一短といった感じ。価格面では後追いのLikebookの方が若干安価ではあるが、どちらも7.8インチクラスで3~4万円程度、その上位10.3インチクラスは5~6万円弱程度(更に最上位13.2インチだと9万円程度と跳ね上がる)。どちらにしても所謂中華タブレット(失礼)なのでそこまで気軽に買えるという価格でもなく少々勇気が要る。素直に一般的な大画面タブレット端末を買う方が安上がりではあるのだが…。
そうこう迷った挙句に私が選んだのは、8インチクラスより10インチクラスそして現在最新モデルのBOOX Note2であった。
Onyx BOOX Note2 | boyue Likebook Alita | |
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発売月 | 2019年11月 | 2019年8月 |
SoC | Qualcomm MSM8953 (Snapdragon 625) (8 Cores, 2.0GHz) |
Rockchip RK3368 (8 Cores, 1.5GHz) |
OS | Android 9.0 (Pie) | Android 6.0 (Marshmallow) ※ Android 8.0 (Oreo) アップデート予定 |
メモリ (RAM) | 4GB (LPDDR3) | |
ディスプレイ | 10.3インチ HD Mobius Carta Flexible Screen (1872×1404, 226dpi) | |
内蔵ストレージ | 64GB | 32GB |
USB | USB Type-C (OTG) | |
ヘッドフォン端子 | なし (USB Type-C) | 3.5mm ステレオミニジャック |
ワイヤレスLAN | IEEE 802.11a/b/g/n/ac | IEEE 802.11b/g/n |
Bluetooth | Version 4.1 | |
内蔵スピーカー | ステレオ | |
microSDカードスロット | なし | あり (SDHC/SDXC対応, 128GBまで) |
バッテリー | リチウムイオンポリマー 4300mAh | |
本体サイズ | 249.5mm × 177.8mm × 7.1mm | 252mm × 177mm × 8mm |
重量 | 378g | 394g |
開封そして起動
BOOX Note2はB5サイズでA5サイズ相当の10.3インチパネルで、OSはAndroid 9.0。これまでのBOOX、Likebook共にAndroid 6.0が主流だったのに大幅な飛躍。一応両社どちらも旧機種のOSをバージョンアップさせる予定があるとの情報があるが果たして…それはさておき、SoCはQualcomm Snapdragon 625。こちらもそれぞれRockchip RK3368が主流だったのがメジャーなSoCを採用して一気に飛躍。
ワコム製で電池不要のデジタイザー機能付きスタイラスペンが付属する。後ろ側も専用アプリでは消しゴムとして機能する。勿論スタイラスペンを使わずとも指で操作できるし、パームリダクション機能も搭載。
BOOX Note2の電源を入れさあいじり倒そうとするが、「Google開発者サービス」から「端末が認証されていないのでやれ」という趣旨の通知が消しても消しても何度も繰り返し五月蠅く鳴りまくる(初期状態の通知音量がかなり大きい)。
初期段階ではBOOX端末自体がGoogleに認定されていない為に、Google関連の機能やアプリが封印状態となっていて利用できないが、各自で認証を受ければ封印を解除できる。
封印状態ではGoogle Playストアも使えない訳だが、それなら他のアプリストアサイトを利用するか、「BOOXストア」というBOOXシリーズ独自のアプリストアが用意されている。ここにもいくつかの大手電子書籍ストア等のアプリが掲載されていているが、これらも「インターネットから研究目的で収集された」アプリと堂々と宣言していて公式配布ではないようだしバージョンも古かったりする。それ以前に(現時点では)掲載量も少ないので利用価値は殆ど無い。
BOOXシリーズでは、Androidでお馴染みの画面下部にあるナビゲーションキー「戻る」「ホーム」「タスク(アプリ履歴)」が表示されていない(一応通知領域に統合されているのだがちと面倒)。その代わり「ナビボール」と呼ばれるボタンが(有効にしている限り)ほぼ常時表示されている。ナビボールをタップすると「戻る」「音量」「現在開いているアプリの設定」「タスク切り替え」「電源」等のショートカットが展開される。ボタン割り振りはカスタマイズ可能で、ナビボールをダブルタップするとホームへ戻る。また、アプリのボタンやソフトウェアキーボード等と被ってしまい邪魔な場合はドラッグすれば任意に場所を動かせる。
ただでさえ電子ペーパーディスプレイで省電力であるが、本機には内蔵カメラやNFC、GPSやジャイロ等の余計なセンサー類は一切搭載していない非常に潔くて省エネなハードウェア構成。必要に応じて通知領域から画面の向きを手動で切り替える必要があり、通常はたとえ横画面強制アプリでも自動回転せず縦画面で表示されたりする(ただし画面が縦に伸びてしまう訳ではない)のは良くも悪くもではあるが、画面の回転を自動で支援してくれるアプリを用意すれば問題は無い。
メイン画面
BOOXシリーズでは、一般的なスマートフォンやタブレットで見慣れたお馴染みのAndroidホーム画面ではなく独自のホーム画面で、壁紙やウィジェットは使えない。
とりあえず左にあるタブを順に切り替えてみる。
[書棚]は端末内にあるPDFやEPub等、後述の内蔵ドキュメントリーダーアプリが対応しているドキュメントファイルが陳列される。
[書店]は中国の京东(JD.com)という、日本でいうところの楽天みたいな会社が運営している「JDRead」という電子書籍ショップで、日本語の書籍はラインナップされていない。不要なら「設定」にて無効にする事ができるが、単に使えなくなるだけでタブが消える訳でも無い…なんとかしてくれないのかな。
[ノート]は手書きメモアプリで後述するとして、[保管庫]はファイルマネージャーで基本的な機能は抑えてある。
[アプリ]は言わずもがな、インストールされた各アプリケーションを起動する。
[設定]から直接アクセスできる設定項目は少ないが、『Shortcut Creator』等の(システム設定へもアクセス可能な)ショートカット作成アプリを利用すれば、[開発者向けオプション]を含めて隠された深い設定項目にもアクセス可能となる。ただし電子ペーパーというただでさえ特殊なハードウェア構成なので、弄ったところで効果は殆ど無い。
画面比較
とりあえず手持ちのタブレット端末を並べて(雑ではあるが)画面比較してみた。
<縦画面>
<横画面・見開き>
<見開き一コマ拡大>
<雑誌>
<小説>
『読書尚友』を使用・上からZenPad 3 8.0 (Z581KL)、BOOX Note2。
画面表示モード切り替え
BOOXシリーズでもLikebookシリーズでも、通知領域に「表示モード(リフレッシュモード)切り替え」スイッチがあり、それを切り替える事によって画面表示を粗くして描画スピードを上げる事ができる。BOOX Note2では「通常モード」「高速モード」「A2(2階調表示)モード」「Xモード」の4つがあり、順に描画スピードが向上する代わりに画像が荒れる(スクリーンショットキャプチャーでは「高速」「A2」共に「通常」と同画質となる)。「Xモード」は初期ゲームボーイのような点描感で不鮮明になるが、動画もなんとか視聴できるし、「通常モード」ではウェブブラウザ等でスクロールすると画面がグチャグチャになって読めなくなってしまう(事がある)のが解消されるといった非常に便利なモード。
Xモードでゲーム
Xモードでゲームはどうかと、試しに『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』を起動してみる。
流石に音楽ゲーム部分はどうやってもタイミングが合わなくてまともにプレイ(=クリア)できないが、その他のガチャやコミュ等の作業やMV鑑賞(Xモードでも60fpsや30fps出る訳が無いので滑らかとはいかずとも)は、下のスクリーンショットを載せたがそれなりに観れる。ちなみにスクリーンショットには電子ペーパー特有のゴーストが映らないので常にここまで綺麗に見えるという訳では無いが、実際そこまで気にもならずに鑑賞できる。
という事は画面の動きが少ない非アクションゲームなら快適に遊べるモノもあるだろうが、そもそもこんな機種で本格的にゲームやろうなんて奇特なヤツはいないよね。にしてもまさかここまでできるとは予想以上に凄くて驚いたBOOX Note2!!
手書きノートアプリ
付属のスタイラスペンはこの為にある、BOOX端末に組み込まれている手書きノートアプリ『Note』(そのまんま)。
作成したノートはPNGまたはPDFファイルで出力できる他、[設定][アカウント管理]からYoudao、Evernote、Dropbox、OneNoteとアカウント連携させておけばPDF形式でそれぞれのクラウドストレージへ自動的にバックアップされる。
…そういえば手書きメモと言えばふと思い出した『OneNote』を試してみたが、『Note』に比べればペンの反応は若干鈍いがそれなりに使えるレベル。まあ個人的にはOneNoteはEvernoteに比べると機能に若干のクセがあるので正直あまり好きではないのだが、マイクロソフトアカウントさえあれば無料で使えるし。
あと、他所の旧機種レビューに倣って、ワコム製の手書きメモアプリ『Inkspace』を試用してみるが、『Note』とは異なり通常描画モードではペンの反応が鈍いが、描画モードを「Xモード」に変える事で(画面ノイズは増えるが)ペンにそこそこ追随してくる。ネットで斜め読みした旧機種のレビューでは動作が重くて使い物にならないとまで酷評されていたが、これもSoCとXモードの恩恵なのだろうか。
ドキュメントリーダーアプリ
そしてもう一つ、BOOXの根幹となるドキュメントリーダーアプリ『NeoReader』。
横画面で2ページ見開きにできる他、画面を分割して各種ドキュメントを参照しながらメモを取る事もできる(当然このメモもクラウドストレージへ自動バックアップされる)。マージンを自動でカットする機能や“しおり”機能等、必要な機能は揃っているし、動作も軽快で使い勝手は良い。
ちなみに先述の『Note』や『NeoReader』はファームウェアに組み込まれているので、これらのアップデートはファームウェアと共に行われる。
デフォルトブラウザ
デフォルトブラウザはAndroid標準搭載のブラウザだが、行スクロールや拡大縮小ができるコントローラーが表示される。ちょっとした用途でしかブラウジングしないならこれだけでも良いが、やはりGoogle Chrome等の設定やブックマークの同期ができるブラウザアプリを用意した方が便利ではある。但しこのデフォルトブラウザはアンインストールや無効化はできない。
音楽再生
ステレオスピーカーを搭載、イコライザーは標準搭載されていないが音質も意外と悪くないので音楽やradikoも充分聴ける。ステレオミニジャックは無いのでヘッドフォンやイヤフォンはUSB Type-CかBluetoothで。
ベンチマークテスト
さて、いつものようにベンチマークテストをやってみる。
Onyx BOOX Note2 | ASUS ZenPad 3 8.0 (Z581KL) |
|
---|---|---|
Total | 91199 | 104317 |
CPU | 35977 | 41668 |
CPU 数学演算 | 6413 | 10633 |
CPU 共通アルゴリズム | 5498 | 8569 |
CPU マルチコア | 24066 | 22466 |
GPU | 10693 | 21109 |
Terracotta - Vulkan | 1108 | 1794 |
Coastline - Vulkan | 3537 | 8149 |
Refinery - OpenGL ES3.1+AEP | 6048 | 11166 |
MEM | 26663 | 27356 |
RAMアクセス | 13936 | 18393 |
ROM APP IO | 2814 | 2300 |
ROMシーケンシャル読み込み | 4284 | 3705 |
ROMシーケンシャル書き込み | 3240 | 1544 |
ROMランダムアクセス | 2389 | 1414 |
UX | 17866 | 14184 |
データセキュリティ | 4322 | 4786 |
データ処理 | 4906 | 5521 |
画像処理 | 1355 | 3871 |
ユーザーエクスペリエンス | 7283 | 6 |
Onyx BOOX Note2 | ASUS ZenPad 3 8.0 (Z581KL) |
|
---|---|---|
System | 4251 | 5341 |
CPU Tests | 9294 | 7588 |
Integer Math | 25748 MOps/Sec. | 14026 MOps/Sec. |
Floating Point Math | 3832 MOps/Sec. | 2935 MOps/Sec. |
Find Prime Numbers | 5.62 Million Primes/Sec. | 6.56 Million Primes/Sec. |
Random String Sorting | 8.15 Million Strings/Sec. | 4.54 Million Strings/Sec. |
Data Encryption | 551 MBytes/Sec. | 328 MBytes/Sec. |
Data Compression | 2.73 MBytes/Sec. | 2.49 MBytes/Sec. |
Single Thread | 1127 MOps/Sec. | 1338 MOps/Sec. |
Cross-Platform Mark | 15013 | 10495 |
Memory Tests | 6459 | 8707 |
Database Operations | 35.8 KOps/Sec. | 29.6 KOps/Sec. |
Memory Read Cached | 1021 MBytes/Sec. | 1242 MBytes/Sec. |
Memory Read Uncached | 956 MBytes/Sec. | 1184 MBytes/Sec. |
Memory White | 1044 MBytes/Sec. | 753 MBytes/Sec. |
Memory Latency | 164 ns | 97.1 ns |
Memory Threaded | 5595 MBytes/Sec. | 4619 MBytes/Sec. |
Disk Tests | 52565 | 25422 |
Internal Storage Read | 49.1 MBytes/Sec. | 38.5 MBytes/Sec. |
Internal Storage White | 64.1 MBytes/Sec. | 15.9 MBytes/Sec. |
External Storage Read | 47.8 MBytes/Sec. | 48.2 MBytes/Sec. |
External Storage White | 76.0 MBytes/Sec. | 21.9 MBytes/Sec. |
2D Graphics Tests | 2706 | 5040 |
Solid Vectors | 8462 Vectors/Sec. | 12370 Vectors/Sec. |
Transparent Vectors | 4270 Vectors/Sec. | 8320 Vectors/Sec. |
Complex Vectors | 122 Complex Vectors/Sec. | 131 Complex Vectors/Sec. |
Image Rendering | 774 Images/Sec. | 2096 Images/Sec. |
Image Filters | 32.8 Filters/Sec. | 34.9 Filters/Sec. |
3D Graphics Tests | 1355 | 1837 |
Simple Test | 29.5 Frames/Sec. | 26.2 Frames/Sec. |
Complex Test | 33.1 Frames/Sec. | 43.4 Frames/Sec. |
OpenGL ES using Unity | 4.52 Frames/Sec. | 6.14 Frames/Sec. |
Onyx BOOX Note2 | ASUS ZenPad 3 8.0 (Z581KL) |
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---|---|---|
SoC | Qualcomm MSM8953 (Snapdragon 625) 2.0GHz 8Core 64bit |
Qualcomm MSM8956 (Snapdragon 650) 1.4GHz 6Core 64bit |
Single-core Score | 176 詳細(Geekbench Browser) |
268 詳細(Geekbench Browser) |
Multi-core Score | 1062 詳細(Geekbench Browser) |
730 詳細(Geekbench Browser) |
Compute Score (OpenCL) |
273 詳細(Geekbench Browser) |
366 詳細(Geekbench Browser) |
Compute Score (Vulkan) |
N/A | N/A |
旧機種は触ったことが無いので分からないのだが、やはりQualcomm Snapdragon 625のお陰か、一般的なスマートフォンやタブレット端末と遜色無く非常に軽快に(画面描画以外は)動作してくれるし、汎用電子書籍リーダーだけでなくメモパッドとしても使えるので、予想以上に便利な端末である。ファームウェアアップデートも随時行われているので長く使えそう。…無効にしても除去できない[書店]タブだけは残念至極で何とかして頂きたいものだが。
Amazon KindleやRakuten Koboで専用の電子ペーパー端末を買うのも悪くはないが、ちと高価だがより大画面で、なにしろ数ある電子書籍ストアを併用できる、非常に重宝する贅沢な汎用電子ペーパータブレットを持ってみるのもいかがだろうか。
<関連サイト>
BOOX 公式サイト
BOOX Shop – The Official BOOX Store
SKT 株式会社
深圳市博阅科技股份有限公司 (boyue)
デントオンラインショップ
(2020年5月1日 記事修正)
(2020年9月14日 記事修正)
(2020年12月6日 記事修正)
(2020年12月19日 記事修正)
(2021年1月26日 記事修正)
(2021年2月8日 記事修正)